必見フィンガージョイント

必見!フィンガージョイント

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フィンガージョイントとは

  • 種 類
    構 造 概 要
  • 鋼製フィンガージョイント(荷重支持型)
    鋼材で組み立てられ、大きな伸縮量に対応でき、直接輪荷重に耐えることのできるクシ型構造。伸縮量、橋種によらず広く使用されている。
  • ゴム系ジョイント(突合せ型)
    床版遊間部で輪荷重を支持できない構造であり、伸縮量および遊間の小さい比較的小規模な橋梁に使用される。
  • ゴム系ジョイント(荷重支持型)
    各種形状のゴム材と鋼材を組み合わせ、床版遊間部で輪荷重を支持できる構造としたものであり、比較的中規模な橋梁に使用される。
  • ビーム型ジョイント(荷重支持型)
    型鋼やゴム材質等により組み立てられ、直接輪荷重に耐えることのできるビーム型構造。
上の表は日本橋梁建設業協会の鋼橋伸縮装置設計の手引きによる道路橋伸縮装置の種類です。

いきなりかたくるしい表がでてきましたがちょっぴり辛抱して下さい。 この表は読み飛ばしてもらっても結構です。

   車を運転中に橋の取付け部や高速道路の継ぎ目でコツンとショックを感じる場所にそれは設置されています。

これからお話しするのは最も古くからあり最も普遍的に採用されている伸縮装置である鋼製フィンガージョイントのお話しです。

ところでフィンガーて何?それは指です。あたりまえか・・・
左右の指先を広げたまま組み合わせて下さい。

それが鋼製フィンガージョイントの顔です。専門用語でフェースプレートといいます。くし型に切断した分厚い鉄板を左右組み合わせて路面に埋め込んであります。

「顔が指」これでもう鋼製フィンガージョイントをイメージできましたね。そこらじゅうの道路で目にしています。上の写真がその正体です。

   まさに「顔が指」でしょう。鉄の塊に顔や指などと名付けるなんて愛着がわいてきませんか。

フィンガージョイントとは

フィンガージョイントとは

鋼製フィンガージョイントの歴史

鋼製フィンガージョイントの歴史
写真は鋼製フィンガージョイントの全体モデルです。顔(フェースプレート)以外は道路に埋め込んであるので普段はお目にかかれませんが顔の下には手やひげに見えるようなパーツもあります。顔だけ出して姿をみせず重たいトラックにもびくともしない、そう縁の下の力持ちなのです。

前置きはこれくらいとして鋼製フィンガージョイントっていつ頃登場したものでしょうか?本格的に設計図書に記載されたのは道路橋伸縮装置便覧(S45.4 日本道路協会)になるようです。

伸縮取替設計の際に昭和30年代の図面をみる機会がありますがその頃はスライドプレート構造が多かったようです。その頃の伸縮装置は昭和50年台に一度更新されているものも多いですがその更新時にはフィンガー構造に変更されています。

鋼製フィンガー構造は現在まで脈々と受け継がれています。ではそれはなぜでしょうか?次にその理由を構造から考えてみたいと思います。

鋼製フィンガージョイントの特徴

道路橋の伸縮装置に求められる性能は道路橋示方書(橋造りのバイブルです)を引用すると次のようになります。
  • 橋の各種変動作用支配状況において車両が支障なく走行できる路面の平たん性、連続性及び強さを確保できる事
  • 車両の通行に対して必要な耐久性を有すること
  • 雨水等の侵入に対して水密性を有すること
  • 車両の通行による騒音、振動が極力発生しないよう配慮した構造であること
  • すべり抵抗が路面として求められる水準以上にあること・・平成29年11月の改定により新たに追加されました
ジョイントというからには目的はつなぎ目です。橋桁と堤防、もしくは高速道路の桁と桁の間に設置されています。鉄やコンクリート製の橋げたは気温の変化で伸縮します。また地震の揺れでも隙間が大きくなったり小さくなったりします。そこに伸縮継手が必要とされます。

近年鋼製フィンガージョイント以外の製品ジョイントも各メーカーより多種提案されていますがその構造はメーカー独自の規格によるものでそのメーカーしか製作できません。対して鋼製フィンガージョイントは日本橋梁建設業協会や各高速道路会社が規定した設計基準にならえばどこのメーカーでも製作できるものです。そしてその設計基準は上記の要求性能に対して長年積み重ねた実績を有する簡単で頑丈な構造となっています。

一言でいうとゴム製などに比べてシンプル&ハードです。それが鋼製フィンガージョイントが長い期間、普遍的に採用され続ける最大の理由です。

鋼製フィンガージョイントは設計を独自に行う必要がありますが、製品ジョイントなら設計作業をそのメーカーに代行してもらえるという安易さから採用される例があるようです。しかし一旦図面に採用されるとそのメーカーにしか製作を発注できず入札時の公平性に問題が残ります。

その点、鋼製フィンガージョイントならメーカー指定はありませんのでご安心下さい。弊社は鋼製フィンガージョイントのメーカーですが設計業務だけでも請け負います。製作メーカーならではのきめの細かい設計を心がけています。

フィンガー形状の違い

フィンガー形状の違い
フィンガー形状には上図のような種類があります。またフィンガー長ℓ0は橋ごとに異なる伸縮量によって決定されます。
  • (1)型・(2)型
    (1)型と(2)型が現在の標準形状です。(1)型は台形の形です。(2)型は俗にロケット型と呼ばれており二輪車のタイヤが落ち込みにくいように考慮されています。
  • (A)~(D)型
    (A)~(D)型は古いタイプです。桁の連続化が進み大きな伸縮量となった昨今ではC型はタイヤが落ち込み易く適しません。D型も付根幅が狭く応力集中が大きいため好ましくありませんのでC型やD型を見かけたらロケット型に変更して下さい。
都市高速会社によっては(1)型の寸法を若干変えた独自のフィンガー形状を採用されている場合もあります。

最大の鋼製フィンガージョイント

  • 最大の鋼製フィンガージョイント
  • 最大の鋼製フィンガージョイント
  • 最大の鋼製フィンガージョイント
左の写真のフィンガー板厚は130mm、フィンガー長は1000mmもあります。
弊社で製作した過去最大板厚で新東名高速道路の長大橋用に製作したものと同じです。これだけ極厚の鋼板を曲げずに正確にクシ状に切断するには特殊な切断設備と非常に高い技術力が必要です。

弊社では専用の水素ガス切断装置を使用して切断しています。中央と右側の写真は水素ガス切断と普通のLPガス切断の違いを示しています。LPガスでは板厚の下側程隙間が広がっているのがわかります。水素ガスではほとんどまっすぐに切断しており切断面が高品質なのがわかります。
水素ガスの方が入熱量が約60%に低減され熱歪が大幅に減少する上に切断速度も10~30%早くなります。また切断面が滑らかでガスノロが剥離しやすため作業時間の短縮という利点もあります。

更に水素ガス切断では二酸化炭素の発生がゼロで地球環境に優しいという大きな利点もあります。


定着構造の種類

定着構造の種類
上の図は鋼製フィンガージョイントを輪切りにした断面図で、定着方法別の区分になります。
一般型は国道や都府県道などに広く採用されています。他にNEXCO型と名古屋高速(福岡北九州高速)型に大別されます。いずれもコンクリートに埋め込み固定するための定着構造に特徴があります。

コンクリートに埋まらない鋼床版桁に設置される場合は高力ボルトで固定する特有の構造となります。また首都高速、阪神高速、広島高速などでは一般型と同じ定着方法ですがフェースプレートが交換可能な構造になっています。

寒冷地の伸縮装置

寒冷地の伸縮装置
雪国のフィンガージョイントには特殊な部品が設置されます。それは除雪車の雪かき装置(スノープラウ)がひっかからないようにするプラウ誘導板です。これにより伸縮装置と除雪車を守ります。また北海道型はフィンガーの隙間から圧雪が入らないように工夫されています。

止水対策(非排水装置)

隙間(専門用語で桁遊間)に設置される伸縮装置には雨水が落下しないように非排水装置が設置されます。弾性シ ール材タイプと乾式止水材タイプに大別されます。伸縮できる素材としてゴムやウレタン状のものが使われます。桁端に設置される伸縮装置の防水は非常に重要視され、さまざまな製品が研究開発されています。
弊社では自社製品であるMKSジョイントシールを開発し販売しています。

古い橋梁に設置されている伸縮装置では非排水装置が設置されていない垂れ流し状態で桁本体や支承などの発錆で橋梁のライフサイクルを縮めるとして大きくクローズアップされています。
 弊社ではそうした非排水装置更新の設計業務も行いますのでお気軽にご相談下さい。

すべり止め対策

皆さんは車の運転中に大型の伸縮装置の上でスリップした経験はありませんか。特に雨の日にブレーキをかけたときにおきやすいです。つるつるの鉄板なのですべり止め対策がNEXCOや橋建協の設計基準に記述されています。

道路橋示方書の改定(平成29年11月)によりフェースプレートの最大幅にかかわらずすべての鋼製フィンガージョイントにはすべり止めが必要になりました。

弊社では他社に先駆けてアモルファス合金溶射によるすべり止めを開発し多くの施工実績を重ねました。現在はより性能を高めた後継のHybridジェットチタンコーティングを新たに開発し実績を積み上げています。詳しくはカタログをご参照下さい。

Hybridジェットチタンコーティング

防錆対策

防錆対策
数十年にわたり雨ざらしにされる鉄製品ゆえに鋼製フィンガージョイントの防錆対策は重要です。

現在は数層の塗装を重ねた重防食塗装が主流ですが、名古屋高速のように溶融亜鉛メッキを施すものもあります。また近年では新名神高速でアルミマグネシウム合金溶射を施す事例もでてきています。

弊社では専門の溶射業者様と提携し最新の溶射作業も一括で施工致します。

鋼製フィンガージョイントの製作苦労話(おまけ)

鋼製フィンガージョイントの製作苦労話
右の写真はなんだかわかりますか?造りかけの鋼製フィンガージョイントです。大きく曲がっているのがわかりますね。小さなものにこれだけ溶接が集中している鋼構造物はそうありません。一言でいうと溶接の塊です。

溶接すると歪が発生します。顔の部分は重いトラックに耐えるため部厚い鉄板(100mmに達するものもあります)ですが体の部分はそれほど厚くはありません。板厚が異なると歪量がアンバランスになりこれだけ曲がるのです。実際には曲がるのを見越して逆方向に先に曲げてあります。

また溶接歪が発生すると長さが短くなります。硬い鉄板が縮むというと理解に苦しむかもしれませんが10mの長さの鋼製フィンガーでは完成前後で20mm以上も短くなるものもあります。その縮む量は構造や板厚の他、複雑な要素に左右されますが鋼製フィンガージョイントの長さ(道路幅)はミリ単位の高い品質精度が要求されます。

鋼製フィンガージョイントの製作は長年の経験と高い技術力が要求される溶接歪との戦いです。